久保修さんの切り絵 町家の春夏秋冬

kyoto.wjr-isetan.co.jp

新幹線に乗る前後の暇つぶしに行くことの多い美術館えき。今回もあまり期待せずに行ったら、意想外に良かった!おたべのパッケージは見たことがあったけど、久保修さんという作家を特に意識したことはなかった。

キャベツ畑、カイワレ大根、オクラ、マスクメロン、わさび(静岡の山の頂上で収穫を手伝ったそう)、金時人参と西洋ニンジン、何本も並べて造形美を楽しんだというアスパラガス、薬味まで和紙で表現した!そば……なぜか食欲はそそられないけれど、くっきりと縁どられた鮮やかな懐かしい原風景に引き込まれる。輪郭をはっきりさせるというのは、影絵とかにもあるけれど、たとえば印象派画家などはどう感じるのだろうか?

と思ったらマーライオンやNYハードロックカフェクライスラービルディングなども違和感なく描かれる。Kirieを国際化したいという思いがあったそう。一方的に伝えるだけでなく先方との双方向の交流が必要と言っているが、海外の芸術からインスパイアされた手法はあったのだろうか?

さらに、切り絵を立体で表現できないかと思って、専門家のアドバイスもあって、データをとってレーザーでステンレスの模型を作ったが、温かみを出すために中に照明を入れたという。屋根に椿かなんかの花びらが降り注ぐ作品は、見ていて飽きない。

カボチャの蔓に乗っているカマキリとか、町家の前を歩くネコとか、あるいは端っこに描かれたもののために縁が延長されているとか、ディテールを見つけるのも楽しい。

というわけで、本日のベストを三つ選ぶとしたら、「日本の夏」という朝顔とネコが主役の狭い路地から外を眺めた作品と、町家の春夏秋冬を一枚に収めたカラー及び白黒の作品。桜、風鈴、もみじ、冬鳥と雪…簡潔にして変化を楽しめる。蒙古襲来絵詞など絵巻の例を引くまでもなく、異なる時間を一枚の中に描き切るのは日本絵画ならでは。

日本的と言えば、雨を描いた作品も一つあって、北斎日本橋広重の夕立の作品と同じように、線で表現されているのも面白い(ただし、マーライオンの吐き出す水は、水のカタマリとして表現されている)。