距離×コミュニケーション、人工×自然
ネットで知り合った方に教えていただいたのだが、デンマークの設計事務所BIGの作品で、コペンハーゲンに8ハウスという建物がある。その人いわく
広大な国立公園の目の前に位置していてルーフガーデンがあったり、建物内は敢えて各部屋の庭と隣接する長いスロープを通らないと部屋に辿り着けない設計で、住民同士の交流が促されるようになっていたり、自然との調和×コミュニティ×モダンデザインの掛け合わせが最高に素敵な建物
だそうだ。面白いなー。インターアクション・デザインって言うんだって。「建築家は人間関係を築いているのだ」と言っている人がいたけど、動線によって交流が深まったり自然に触れたりという好例。
もちろんオフィススペースでもインターアクションを促すような動線はいろいろ議論されているはずだ。画像検索で見ると、BIGの事務所は何の仕切りもない感じだ。
私が昔いた会社では、途中からフリーアドレス制になって、何の仕切りもなく好きなデスクに座ってカタカタ仕事する感じで、意外と気に入っていた。インターアクションが促されたどうかはわからないけど、確実に動線は変わって自由度も増した。
(ちなみに今の職場でも、最近部屋を引っ越して、デスクトップがむき出し状態で、無駄なものがなくてスッキリしてるんだけど、そばを通る人が私の視線を感じるかもしれないので、パーティションを買うことにした。)
ソーシャルディスタンス×インターアクションデザイン
コロナの時代、換気と距離と健康を保ちつつコミュニケーションがとれるようなデザインも生まれてくるのではという期待もある。複数の人から聞いたんだけど(そのうちの一人はアムステルダムのホテルの朝食会場でWiFiパスワードを聞いてきたアメリカ人のお姉さん)、最近の建築業界では建物×健康がトレンドなんだって。住んでいる人の心身の健康を高めるのはどんな建築か、という視点。健康への投資がフロンティアになっている今、当然といえば当然。
コロナで閉館していた図書館に久しぶりに行ったけど、入口と出口の動線が一方通行になっていた。物理的距離を高めつつ、錯覚でもいいから心理的距離やインターアクションを促すようなデザインをビルトインしたり、既存の公共施設についてはアドオンしたりする工夫がこれから必要になりそうだ。
人工資本×自然資本
それだけでなく、8ハウスは、人工的な資本でありながら、インターアクションによってソーシャルキャピタルを醸成し、自然資本のありがたみを味わえるものになっていそうだ。日本庭園とかもそうだけど、自然の要素を取り入れた人工物を、混合資本Mixed capitalなどと呼べるかもしれない。
一つ気を付けるべき点は、私たちが求める自然って、必ずしも自然そのものではなくて、お手軽に気を紛らわしてくれる、都会からアクセスしやすい安全なものだったりする。それが一概に悪いとは言えないけど、気候変動や大気汚染や生物多様性など、本当に重要な環境問題において守るべき自然とは違う次元であることには注意。