*[アート] 人間とその他との境界

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進化する人類というエントリーをしたので思い出したけど、今年の夏に、似たような趣旨の展覧会をシンガポールで見てきた(同じタイトルの展覧会がダブリンでもあったが、かなり構成が異なるようだ)。

本展の第一部「能力の拡張(Augmented Abilities)」で紹介されている、昔から体の一部を機械で動かすパフォーマンスをしてきたオーストラリアのStelarc氏、1996年のアトランタ五輪パラリンピック炭素繊維の義足を付けて走ったAimee Mullins氏の「チーター足」、頭頂部に触覚みたいなものを植え込んで英国政府にサイボーグと公式に認められたNeil Harbisson氏など、昔から世に問うてきた先駆者に敬意。

この展覧会は、人間の内面というベクトルには進まなかったけど、自分のコピーロボットやAI(そして火災報知器のようなHAL)は意思や意識を持つのか?と考えると、ブレードランナーの「生身の人間とレプリカントの境界ってどこ?」という問いかけにも通ずる。

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人間とAIの境界というテーマは、重いし避けられないけど、最近やや食傷気味でもある。では人間と自然の境界とは?(こっちも食傷気味かもしれないが…)

そこで個人的に一番面白かったのは、Authoring Environmentsというセクションで紹介されていた、Laura Allcorn氏の、人間が受粉をするためのキット(The Human Pollination Project)。2006年ごろから、ミツバチが突然大量にいなくなるCCDという現象が見られるようになった。もしミツバチの活動を人間がすべてやらなければならなくなったとしたら?という問いかけだ。生態系にはこんなに価値がありますという話はどこにでもあるけど、実際に人工物で自然を代替する取り組みをやってしまうのは、開眼だった。

アートやインスタレーションでの問いかけは、フィクションを超えるインパクトを持つこともあるし、未踏の領域における哲学的な問いかけに適しているのかもしれない。

余談ながらAllcorn氏、今はユーモアについてのプロジェクトで忙しいようだ。全然違うけど、こっちも面白そう。

IFCI