*[TED]建築家は人間関係を築いているのだ

www.ted.com

アメリカの建築家Jeanne Gangという人が、Architects are relationship buildersと言っている。

公共空間が人間関係を形成するという議論は珍しくない。そしてうちの会社でも話題になっていたけど、普段一緒に仕事をしない人同士の交流を活性化するためのオフィススペース設計という議論もある。でも建築という、都市空間やオフィススペースのちょうど中間にある、物理的な単位だけでもこういう議論ができるのが新鮮だった。もちろん、私が知らないだけで、そういう建築の議論はいっぱいあるのだろう。

このプレゼンで具体的に紹介されているのは、みんなでワークショップしながら作っていった設計図で、警察署をPoliceからPolisにする、つまり従来のように駐車場の真ん中にあって近寄りがたい権威の象徴であるような場所ではなく、みんなが集まって交流する空間にしよう、という考え方。実際に、バスケットボールのコートを中心に警察署を配置してみたら、親御さんはみな安心してそこに子供を行かせるようになったという。

そういえばうちの近所の警察署でも、地元の子どもたちに剣道を教えていて、これをもっと開放的にやれば、ここでの趣旨に近くなりそう。でも日本には既にこれに似た考え方がある。(やや神話化している面があり最近はかならずしもそうでないのかもしれないけど)交番が地域の人たちの安心スポットになっていたりする。

また、プレゼンでは、将来的には銀行やら理髪店やらも集めたいとのことだけど…これは日本で既にショッピングモールやコンビニが街で果たしている機能とほぼ同じ。町の人たちが集まる商業的機能が賑わいをもたらすのだけど、そこに治安を司る権威を置くかどうかという違いになってくる。コンビニと交番をくっつけてみるとかもありかも。

皮肉なことに、同じTEDで、アメリカで死んでしまったショッピングモールを撮る人のプレゼンがあった。商業的機能と言っても、一つの資本がトップダウンで作るようなものは、飽きられたり、人口が減ったりするとすぐに撤退してしまう。建設する段階から地元の人をうまく巻き込んで、従来の人間関係を壊さないようなものにする必要がある。結局、警察署に商業的機能をくっつけるのも大いに結構だけど、人間関係(社会関係資本)を損ねないようなものに、ということになるだろう。やはり、建築家(と市民)は、人間関係を建築するのである。

www.ted.com